第25回 常民文化研究講座「古文書修復実習」終了報告
「オンライン実習」を開催
日時:2022年3月7日(月)9:00~16:00
会場:オンライン開催
講師:関口博巨、白水智、山口悟史、中村慧、平田茉莉子
内容:基本的な古文書修復技術の映像を用いた解説
①現状の記録・解体(修理の準備)②修理(繕い・裏打ち)
③復元(修理後の始末、化粧裁ち、製本)④下張文書の剝離 ⑤古文書の整理 ⑥座談会
1997年にスタートした古文書修復実習は、毎年、常民文化研究講座の一環として開催してきた。ところが、2020年3月に開催を予定していた古文書修復実習(2019年度事業)は、コロナ禍のために、開始以来はじめての中止を余儀なくされた。
コロナ禍はその後も収束の兆しをみせず、2021年3月の古文書修復実習(2020年度事業)は、2020年度実習に参加する予定だった方がたを対象として、試験的に「オンライン実習」を試みた。
2021年度の実習は、前年度の経験を踏まえて、初めからオンライン実習を掲げて参加者の募集を行った。あらかじめ応募者数を予測することができず、いささか不安ではあったが、結果的には定員を大幅に上回る応募者があり、抽選によって参加者を決めさせていただくこととなった。
当日のスケジュールは以下のとおりである(参加者21名)。
[日時]2022年3月7日(月)9:00~16:00(Zoom ミーティング)
9:00- 9:45 趣旨説明/講師・参加者自己紹介
9:50-10:35 記録(白水智)
10:40-11:25 修理(山口悟史)
11:30-12:15 復元(関口博巨)
(45 分間昼休み)
13:00-13:45 剝離(中村慧・平田茉莉子)
13:50-14:35 整理(白水智)
14:45-16:00 座談会
1日の「オンライン実習」では、文字通りの実習にはなり得ないが、受講者の皆さんが、日本常民文化研究所の活動と古文書修復の一端に触れていただく機会にできたのではないかと思う。
また、対面での古文書修復実習と同様に、今回の受講者も、博物館や図書館などにお勤めで、日常的に古文書などの紙資料を扱っておられる方が多かった。オンライン実習の最後の座談会は、実習内容にかんする質疑はもとより、資料保存活動を進める上での課題や悩みを語り合う場にもなった。今回はオンライン開催になったとはいえ、その点で、20数年間続いている古文書修復実習の特長は引き継ぐことができたといえよう。
コロナ禍によって、私たちの「古文書修復実習」はオンライン実習という思いもかけない副産物を得た。2022年度の実習もまた、感染症の流行状況をみながら、対面実習とするのかオンライン実習とするのか、慎重に判断していくことになる。
(文責:関口博巨)