神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」 " 日常茶飯 " —日本人は何を食べてきたか



新着情報

調査地域

日本および東アジア(中国・韓国・台湾)

研究目的と期待される成果

  • 茶を摘む滇西系彝族女性
  • 「太華茶」を作る(雲南省臨滄市魯史鎮/写真・楊蕊)

 庶民の日常、常民文化の根幹はいつの時代、どの地域においても衣・食・住が基本となる。和食が世界文化遺産に登録されたが、多様な郷土食だけを見ても、和食とは? の定義付けは難しい。本研究では、日本の常民の食生活、日本人は何を食べてきたのかを多角的に、また異文化から見た和食の特長を検討する。本年度は、その予備的研究期間として、学際的にその課題、視角、方法について先行の蓄積を学外の研究者も招き論議、また、東京農業大学「食と農の博物館」、静岡県島田市「ふじのくに茶の都ミュージアム」を訪問し、学術交流を深める計画であったが、コロナ禍の影響によりいずれも実施が見送られている。
 日本は四方を海に囲まれ、厖大な数の河川に恵まれ全国約3,000カ所の縄文貝塚からは多種類の魚骨、貝殻が出土するなど古くから魚食文化が根付いたが、仏教の影響もあり獣肉食は近代に至るまで遠ざけられてきた。その一方、日本人の主食は米とされながら、実際は「米食民族」ではなく「米食悲願民族」であり、庶民が米を常食できるようになったのは戦後、高度経済成長期以降で、それまでは雑穀や麦、芋、豆を混ぜたカテ飯が当たり前と言われてきた。しかし近年、米を常食化してきた地方もあること、その土地に適応した作物を日常食にしたとの実証的研究も示されてきた。
 本研究では、肉食率が魚食率を超え、コメ離れが進み食生活が多様化する中で、従来の通説を再検討し、食材のみならず、食事作法、食器など広く食事文化を当たり前の「日常茶飯の文化」の表象としてとらえる。当然、茶に対する酒のように非・日常として食事文化もその対照として取り上げられる。参加メンバーのテーマとして、「米文化の再検討・餅の多様性」、「食をめぐる物質文化・民具」、「食の比較文化-粽など」、「日常・非日常の食文化」、「グローカル時代と食文化」などの報告が今後、予定されている。

[期間]2020年~
※2021年に、研究名を「 "日常茶飯" ─日本人は何を食べてきたか—予備的研究」から、「 "日常茶飯" ─日本人は何を食べてきたか」に変更。