神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」 " 日常茶飯 " —日本人は何を食べてきたか


基幹共同研究「''日常茶飯''—日本人は何を食べてきたか」第5回公開研究会 終了報告

「すし・てんぷら・うなぎ・そば—江戸の屋台からつながる現代の食文化—」
 真島俊一氏(株式会社TEM研究所所長)
 真島麗子氏(主任研究員)
 宮坂卓也氏(研究員)

日時:2023年11月17日(金)15:00~17:00
会場:神奈川大学横浜キャンパス9号館212教室
(対面の講演会であるが、関係者のみオンライン併用)

  • 研究会風景
  • 真島俊一氏
  • 真島麗子氏
  • 宮坂卓也氏

 日本常民文化研究所 基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究 "日常茶飯"—日本人は何を食べてきたか」第5回研究会は、公開講演会(関係者のみオンライン併用)として開催された。「すし・てんぷら・うなぎ・そば—江戸の屋台からつながる現代の食文化—」をテーマとして、真島俊一氏、真島麗子氏、宮坂卓也氏が、リレー式講演の形で、示唆に富む研究成果を発表した。
 真島俊一氏の講演では、今回の研究発表は文化庁の「食文化振興に向けた取組」の一環として、文化庁の委託事業「食文化の無形の文化財登録等に向けた調査」の成果であり、特に「食に関するわざ・習俗の歴史」などを中心として展開してきた経緯が説明された。また、歌川広重の江戸末期(天保12〜13<1841-42>年)ごろの作品「東都名所高輪廿六夜待遊興之図」(神奈川県立歴史博物館蔵)やほかの絵巻等を資料として、絵引の方法を使って、当時の「屋台」で売られていた食べものを逐一考証した。
 引き続き、真島麗子氏の講演では「すし・てんぷら・うなぎ・そばに関する年表(江戸時代を中心に)」を踏まえて、日本人の食文化を代表するこれらの料理のそれぞれの歴史が克明に説明された。また、北尾政美の作品「是高是人御喰争(これたかこれひとみくいあらそい)」(天明7<1787>年)や民具(そば包丁)、フィールドワークの写真など豊かな資料を駆使し、そばの歴史やそば粉の製粉技術、そば粉の種類、そば屋の手作り「わざ」などを分かりやく紹介した。さらに、日本全国各地域におけるそばの「食法」について、現地調査の成果をまとめた。
 最後に、宮坂卓也氏の講演では、すし(なれずし、生なれ・浅なれ、早ずし、握りずし)、天ぷら(長崎天ぷら、上方天ぷら、江戸天ぷら)、うなぎ(ぶつ切り、大蒲焼き、辻売り、つけめし)の歴史、系譜、料理技術を氏がそれぞれ整理し、中世から発祥し、江戸時代の隆盛を経て、今現在、東京や大阪などで営業している専門の諸店舗の現状などを解説した。まさに、江戸の屋台からつながる現代の食文化が長い歴史の中に熟成され、身近な日本食として、脈々と伝承されているわけである。

(文責:周星)