基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」 " 日常茶飯 " —日本人は何を食べてきたか
基幹共同研究「''日常茶飯''-日本人は何を食べてきたか」第6回公開研究会 終了報告
「郷土料理」とは何か—熊本県の「太平燕」を事例に—
田村和彦氏 (福岡大学人文学部 教授)
日時:2024年3月8日(金)15:10~16:30
会場:横浜キャンパス9号館9-212演習室(Zoomでのオンライン併用)
日本常民文化研究所 基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究 "日常茶飯"—日本人は何を食べてきたか」第6回研究会は、公開講演会(オンライン併用)として開催された。「『郷土料理』とは何か—熊本県の「太平燕」を事例に—」をテーマとして、田村和彦氏が意味深い研究成果を発表した。
田村和彦氏の発表は、日本と中国の間を越境する「太平燕」という単品料理の歴史や現状を明らかにした。近代期において中国の福建省から伝えられた「太平燕」は、明確な由来を持つ一方で、熊本の「名物」、「うちの郷土料理」(農林水産省)と位置づけられるようになった。「太平燕」の「郷土料理化」プロセスを考察し、日本と中国における「太平燕」そのものの差異を報告したうえで、食を文化財化することの問題点と、主に日本の「郷土」をめぐるイメージのゆらぎについて検討した。
早くから民俗学は各国や各地域の食文化、特に「郷土料理」について記録、考察を加えてきたが、現在、この食文化の領域についても文化の政治化、すなわち食の文化財化が顕著な形で急速に進んでいる。フィールドワークによるデータや様々な資料を駆使した田村和彦氏の研究発表は、「世界遺産時代」における食文化の在り方についての諸問題を鋭く指摘した。
(文責:周星)