ATTIC MUSIUM

神奈川大学
日本常民文化研究所
Institute for the Study of Japanese Folk Culture Kanagawa University

講座と展示

第19回 常民文化研究講座「『漁場図』を読む」

第19回常民文化研究講座が開催されました(報告)


  • パネル報告・伊藤康宏氏

  • パネル報告・橋村修氏

【第19回常民文化研究講座 事業状況報告書 事業の概要及び実施の効果】
 2015年12月5日(土)、神奈川大学横浜キャンパスにて、第19回常民文化研究講座「シンポジウム:『漁場図』を読む」が開催された。常民研ではその発足の早い段階から海域・海民史の研究に取り組んできたが、本年度からは常民研所蔵の漁場図をもとに共同研究「海域海村の景観史に関する総合的研究」を立ち上げている。本シンポジウムはそうした活動を広く市民に公開し、かつ漁場図に関して常民研内外の研究者と情報交換をはかる意図をもって企画された。
 シンポジウムでは、5本のパネル報告と総合討論がなされた。6名のパネリストは歴史学のみならず多様な分野から選定され、学際的な漁場図の読み解きがなされるように工夫されている。パネル報告のタイトルは以下の通りである。1.「なぜ『漁場図』は残ったか」、2.「松江藩・島根県の『漁場図』情報を読み解く」、3.「近世・明治期の漁場図、沿岸絵図にみる景観表現」、4.「漁場図の活用と可能性」、5.「ヤマアテと漁場図」。
 まず冒頭のパネル報告において、常民研にはなぜ大量の漁場図が残されているのか、またその研究資料としての魅力について具体例を示したながら検討した。それを受けて、以後のパネル報告では、具体的に日本各地の漁場図を取り上げながら、文献史学・歴史地理学・人文地理学・民俗学といったパネリストの専門とする分野から漁場図の解析がおこなわれた。
 パネル報告の後は、パネリスト全員が登壇し、学際的な総合討論をおこなった。討論はフロアーからの質問を受けるかたちでなされ、最後に今後の漁場図研究のあり方について、展望と課題が各パネラーから述べられた。
 漁場図に関する常民研の共同研究は始まったばかりであり、その意味では今回の常民文化研究講座は共同研究の成果公開というよりは、漁場図の持つ研究資源としての魅力を広く市民に問い、今後の共同研究のあり方を探ることに主眼が置かれるものであった。北は東北、南は九州・沖縄まで120名を越す参加者を得たこと、またフロアーから多くの意見・感想が寄せられたことで、その目的はある程度果たされたといえる。フロアーから寄せられた意見の多くは、研究の進展を期待するものであり、漁場図を含む常民研の資料が広く研究資料として公開されることを望むものであったことは、今後の常民研の活動にとって重要な示唆となった。 

以上