第20回 常民文化研究講座・国際研究フォーラム 「揺れる沖縄—戦争から占領、そしてシマクトゥバからオキナワン・ロックまで—」終了報告
【第20回常民文化研究講座 事業状況報告書 事業の概要及び実施の効果】
第20回常民文化研究講座・国際研究フォーラム「揺れる沖縄—戦争から占領、そしてシマクトゥバからオキナワン・ロックまで—」は2016年12月10日(土)、神奈川大学横浜キャンパスで開催された。現在の沖縄は政治課題の渦中にあるため、基地や外交など政治的なテーマから議論されていることが多いが、講座・フォーラムでは人々の日々の暮らしや文化を軸として沖縄の戦争・占領そして戦後社会へアプローチするという視点で企画された。
シンポジウムでは映像や音楽を交えながら、3本の報告と総合討論がなされた。まず、比嘉豊光氏が沖縄戦体験をシマクトゥバ(母語)で記録した証言映像「島クトゥバで語る戦世」を上映。シマクトゥバでの証言という手法やその文化運動の意味を紹介した。また、比嘉氏は現在の沖縄の文化状況に触れ、調査・撮影する側の倫理や方法についても問題提起を行った。川平成雄氏は「占領直後の住民生活」として、三線・歌や泡盛が復興に果たした側面を紹介しながら、占領下の暮らしを取り上げた。ロバーソン・ジェームス氏は<「オキナワン・ロック」をめぐる「沖縄」「アメリカ」「日本」>のテーマで報告。戦後沖縄と米軍地の概要を説明し、占領に伴う文化的接合としてのオキナワン・ロックやその社会的意味などについて語った。総合討論では、米国統治下に置かれた沖縄の通貨切り替えや戦後復興、復興を支えた文化的な要素なども議論された。
常民文化に基点を置く常民研にとって、戦争や占領、復興というテーマを言葉や音楽、人々の日常の暮らしと文化接触やアイデンティティーという視点で議論できた点は有意義であった。また、調査研究・撮影する側と対象との関係の在り方をめぐる議論などはフィールドワークのあり方の課題を再確認する機会ともなった。
講座には講師を含む156人が参加した。遠方から参加した沖縄をフィールドとする研究者らのほか、県人会などの沖縄出身者も参加した。常民研では現在、沖縄を直接的なテーマとした共同研究などは行われていないが、講座は沖縄研究における新しい論点や手法、課題を確認できただけでなく、研究者や関係者の意見交換の場ともなり、新たな研究への契機となった。
(文責:後田多敦)