第20回 常民文化研究講座 民具を語る2 「最上紅花の魅力—なぜ手仕事なのか 天然染料なのか—」 (山岸幸一氏)終了報告
日 時:2017年1月16日(月)13:00~16:00
発表者:山岸幸一氏 草木染織家(日本工芸会正会員)
題 目:「最上紅花の魅力—なぜ手仕事なのか 天然染料なのか—」
「民具を語る」企画では、“布”を通した常民文化を取り上げることにしましたが、第2回は染色、織物をテーマに山形県米沢市に住む草木染作家の山岸幸一氏に語り部として登場してもらいました。
米沢織の織元の次男として高校卒業後一旦は家業に従事した山岸さんは、機械織の反物になじめず草木染研究家、山崎青樹氏に支持し、その後、水質など草木染にふさわしい地を求め、昭和50年に現在の米沢市大字赤崩に工房を開きました。
「心豊かな貧乏人」「心もようを織る」が氏の信条で、染料となる植物から自家栽培し、染料や糸と会話しながら織機に向かうと言います。「よく染まった糸は、その迫力に負け使えないことがある。そういう糸は何年か寝かしておくと糸の方から今が使うチャンスだよ!と訴えてくる」と糸に対して気後れがなくなった時、氏はその糸を使い始めるといいます。床の間には、米沢地方に特徴的に分布する木霊の供養塔、「草木塔」の掛け軸を掛けて仕事始めに祈ると言います。
山岸さんの代表的な染職は「寒染紅花」です。煮染をしない冷染技法で織り上げたものにつけた名で、染は湿度が少ない2月、それも真夜中に行われます。氏のごつい手にはあかぎれ一つありません、紅花も含め染料植物はみな薬草であるといいます。山岸さんの染織の話には私達が忘れかけている太陽、風、水など自然の恵みへの感謝が端々にうかがわれました。
当日はパワーポイントが有効に使われ、山岸さん自身の語りと作品にふれながら染織を通した手仕事の世界を具体的にわかりやすく聞く事ができました。
(文責:佐野賢治)