神奈川大学日本常民文化研究所

講座と展示

第25回常民文化研究講座「渋沢敬三と日本の近代」

第25回常民文化研究講座 日本常民文化研究所の100年
「渋沢敬三と日本の近代-越境し総合する知の100年」終了報告

日程:2021年12月4日(土)13:30~18:30
会場:オンライン開催(神奈川大学横浜キャンパス)
参加者:発表者/佐藤健二、全京秀、辻本侑生、永井美穂、丸山泰明
コメント/後田多敦、安室知 司会/関口博巨


  • アチック・ミューゼアム新館(1933年竣工) 
    目録番号:河1-6-15

  • 参加者全員によるディスカッション

 神奈川大学日本常民文化研究所の淵源であるアチックミューゼアムソサエティが1921年に創立されてから2021年で100周年を迎えた。そこで例年12月に開催している常民文化研究講座を、2021年度は日本常民文化研究所100周年記念事業の一つとして渋沢敬三をテーマにして開催した。渋沢敬三については、学者としての側面と実業家としての側面を分けて論じられることが多かったが、今回の講座では渋沢の全体像を捉えるために、総合的に捉えることを試みた。コロナウイルスが流行している状況を考慮し、オンラインミーティングアプリであるZoomとYouTubeライブ配信を活用してオンラインで開催した。
 全体は3部に分かれる。第1部では、渋沢敬三の子息である渋沢雅英氏からいただいた「100周年に寄せる言葉」を所長の安室知(日本常民文化研究所)が代読した。雅英氏の言葉は、父の渋沢敬三の学問への思いが何度も途切れて消えそうになりながらも本人と周りの人々の意思により受け継がれてきたことを、情意をこめて説明するものであった。現在の研究所の関係者たちも、渋沢の学問の思いを受け継ぐことの大切さを実感したはずである。そして全京秀(ベトナム デュイ・タン大学外国語学部長)が「アチック学派の‘知脈’形成と‘常民文化’概念の誕生—人類学史の観点から」と題して基調講演を行い、世界的な人類学史の流れの中に渋沢敬三の学問と日本常民文化研究所を位置づけてその特質を論じた。
 第2部では「人間渋沢敬三に迫る」と題して、4人の研究者が発表を行った。

永井美穂(渋沢史料館)「渋沢敬三と祖父栄一—生い立ちからみえてくるもの」
丸山泰明 (日本常民文化研究所)「ヨーロッパと南島の経験—他者へのまなざしと自己への内省」
辻本侑生(放送大学大学院)「渋沢敬三と銀行調査部—民間企業における「調査」の系譜」
佐藤健二(東京大学)「渋沢敬三における「学問」と「実業」」

 発表はおおむね渋沢敬三のライフヒストリーに従って行われた。渋沢がどのような家に生まれて育ち、どのように日本と世界を認識したのか。そして銀行家としてどのような活動を行い、その活動と民間学としての渋沢の学問との間に底流するものは何だったのが浮かび上がった。
 第3部では「渋沢敬三から何を受け継ぎ、どのように受け渡すのか」と題して、安室知と歴史民俗学科の主任である後田多敦(日本常民文化研究所)のコメントを受けて、参加者全員でディスカッションを行った。
 半日におよぶ発表とディスカッションを行い、渋沢敬三や渋沢が行った常民文化研究に対する新たな視点や論点・評価・課題を見出すことができた。とはいえ、渋沢敬三はあまりにも大きすぎ、5時間にも及んで語り続けても語りきれない部分が多かった。今後も継続して渋沢敬三について考察を深めていく必要を強く感じさせる講座となった。

(文責:丸山泰明)