神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基盤共同研究 日本常民文化研究所所蔵資料からみるフィールド・サイエンスの史的展開

終了報告 第15回 公開研究会

「渋沢敬三の朝鮮研究が残した遺産
 —『朝鮮多島海旅行覚書』と『朝鮮の農村衛生』を中心に—」
沈 一 鐘 氏(ソウル大学 日本常民文化研究所 客員硏究員)

日時:2026年2月19日(木)17:00~18:30
会場:横浜キャンパス9号館12室 (日本常民文化研究所)(オンライン併用 Zoom)
主催:神奈川大学日本常民文化研究所

  • 研究会の様子
  • 沈一鐘 氏

 沈⽒は、渋沢敬三が1930年代に後援・実施した『朝鮮の農村衛⽣』および『朝鮮多島海旅⾏覚書』を⼿がかりに、物質資料だけでなく、調査現場の変容や朝鮮⼈留学⽣の歩みを含めた広い意味での「遺産」を再検討した。とくに、⾃彊会を通じて渋沢の後援を受けた留学⽣たちが、解放後の朝鮮・韓国でも地域医療や農業改良、学術研究に献⾝し、現代韓国で「親⽇」の烙印を押されるような評価とは異なる⽣き⽅を⽰した点が紹介された。また沈⽒は、植⺠地期と戦後をまたいで⽣きた彼らが抱いた複雑な感情を「⼆重の植⺠地性」として整理し、こうした⽂脈のもとで渋沢の影響⼒をどのように再定位できるかを問いかけた。講演後の質疑応答では、このような植⺠地性に加え、地⽅的アイデンティティをめぐる⽇韓の⽐較など多⾯的な議論が交わされ、歴史的経験の評価をめぐる視点の揺らぎや、韓国社会の記憶のあり⽅について参加者の理解を深める場となった。

(文責:泉水英計)