神奈川大学日本常民文化研究所

講座と展示

第27回常民文化研究講座 終了報告


創立100周年記念事業 日本常民文化研究所の100年
「生活世界の史料学」
Researching Historical Materials of the Lifeworld

日時:2023年12月9日(土)13:00~18:00  
会場:神奈川大学横浜キャンパス3号館 205講堂 Zoom同時開催

  • 総合討論の様子。大門氏、久留島氏、大川
  • 中村氏、関口氏、板垣氏、平山氏
会場の全景

 本講座は、第27回目の常民文化研究講座であるとともに、研究所の100周年記念事業の一環として開催された。研究所を主宰した渋沢敬三は、文献史料のほか、民具や絵画史料を用いて、日常の生活世界にアプローチしたことで知られる。史料の領域を拡げた渋沢にたいして、現在の歴史学(文献史学)は、どのように生活世界へアプローチしているのか。本講座では、生活世界にアプローチ可能な史料と、その史料の読み方を問うことを主題とした。
 基調講演の大門正克氏は、陸前高田市でのフィールドワークの経験をふまえて、従来の「史料批判」から「史料読解」へと史料の読み方を拡げることを提起した。報告者のうち、中村只吾氏は『豆州内浦漁民史料』における「三面記事」的な史料を、関口博巨氏は「祭魚洞文庫」所収の産育習俗関係の史料をあげて、近世の生活世界へのアプローチを論じた。近代の生活世界については、板垣貴志氏が家畜改良学・育種学の研究書から「名もなき牛飼い農民の声」へのアプローチを、平山昇氏が西宮神社の『社務日誌』から年中行事の変化とその局面ごとに現れた「様々なアクター」のせめぎあいを論じた。
 本講座は、会場57名、オンライン61名の参加者を得た(登壇者・司会・スタッフを除く)。総合討論では、講演・報告で取り上げられた史料や、その読み方をめぐって活発な質疑応答がおこなわれた。

(文責:大川啓)