博物館構想検討ワーキンググループ
ストックホルム市内の博物館視察
日程:2017年3月23日(木)~3月27日(月)
調査先:スウェーデン ・ストックホルム/スカンセン野外博物館、VASA博物館、NORDISKA博物館、海洋博物館、建築博物館、芸術博物館及び附属東洋館
調査者:内田青蔵、安室知、後田多敦
日本常民文化研究所の附設博物館設置構想の一環として、3泊5日の強行軍で海外視察を行った。訪れたのは、スウェーデンのストックホルム。野外博物館として、世界最初の博物館として知られるスカンセン野外博物館を始めに、ストックホルムにある著名な博物館であるVASA博物館、NORDISKA博物館、海洋博物館、建築博物館、芸術博物館及び附属東洋館を2日間で訪ね廻った。
今回の視察は、博物館構想をより現実化するための基本資料収集のために、昨年から行っていた国内の博物館視察を新たに海外の著名な博物館の視察へと発展させたものである。視察先をスカンセン野外博物館に定めたのは、スウェーデンの民俗学者が近代化の中で消え失せようとする伝統的な庶民の生活と住まいである民家の実物を記録として留めることをめざして創設された、世界最初の野外博物館であることはもちろんのこと、日本常民文化研究所を創設した渋沢敬三も訪れたことのある博物館でもあり、渋沢の経験を追体験し、博物館構想に渋沢の求めていた精神性を反映したいという思いもあったからである。ちなみに、渋沢敬三は、大正11(1922)年に横浜正金銀行ロンドン支店勤務となり、ロンドンでの生活が始まるが、その滞在中の大正13(1924)年に北欧のオスロやストックホルムを廻り、野外博物館を訪ねている(横浜市歴史博物館『屋根裏の博物館—実業家渋沢敬三が育てた民の学問—』2002年)。
スカンセン野外博物館(写真1)の学芸員の案内で、いくつかの建物を廻り、その解説を受けた。その中のひとつの民家であるMora Farmstead(写真2、3)は、およそ300年前の建物でスカンセン野外博物館に最初に移築された農家であるという。渋沢の訪ねた際にも既に存在していた建物を前に、渋沢がどのような思いで見ていたのかが気になった。
スカンセン野外博物館を後にし、午後は、VASA博物館とNORDISKA博物館を訪ねた。VASA博物館は、ストックホルムにある国立の博物館でもっとも外国人の集客力の高い博物館であるという。17世紀の巨大な帆船を引き揚げ、展示しているその空間は誠に迫力のあるもので、そうした実物の魅力を発揮した博物館であった(写真6、7、8)。
NORDISKA博物館は、北欧に住む一般大衆の生活文化に係る博物館で、展示も威厳を感じさせる外観と比べると極めて庶民的な展示で、例えば、1階には1940年代の集合住宅の一住戸の実物大の展示室があるなど、日本の戦後の住宅公団の一住戸の展示をイメージするような展示が見られた(写真11、12)。また、NORDISKA博物館では、子供を含む家族を見学者として重視しているとし、子供の遊び場なども博物館内部に用意するなど、様々な工夫が見られた。いずれにせよ、極めて短時間の視察であったが、展示の方法や運営のシステムなどとともにいろいろ本学の博物館構想の際に参考にすべきことを多く学ぶことができた有意義なひと時であった。
(文責:内田青蔵)