第3回絵馬研究会 終了報告
ムカデの呪力—宮城県角田市福応寺毘沙門堂奉納絵馬をめぐって—
岩崎真幸氏(みちのく民俗文化研究所 代表)
「現代小絵馬」にみる祈願の諸相—現代社会の絵馬を考える—
鈴木通大氏(神奈川大学日本常民文化研究所 客員研究員)
日時:2019年1月28日(月)13:30~16:00
場所:横浜キャンパス9号館11室(日本常民文化研究所)
2019年1月28日(月)13:30~16:00、常民研を会場に第3回絵馬研究会が開催された。
最初に、鈴木通大氏(神奈川大学日本常民文化研究所客員研究員)が「「現代小絵馬」にみる祈願の諸相—現代社会の絵馬を考える—」と題して、まず自身で収集した500点余の小絵馬について、図柄・形態からの分類を岩井宏實氏の案を踏まえて提示、続いて、杉材の板製から現代のスクリーントーンを利用した大量生産のものまで材質について触れ、さらに現代の小絵馬の諸相として祈願内容、土産品などから紹介、小絵馬が現代風俗、民俗信仰を反映する資料性を高く持つことを指摘された。
第二発表、岩崎真幸氏(みちのく民俗文化研究所 代表)「ムカデの呪力—宮城県角田市福応寺毘沙門堂奉納絵馬をめぐって—」は、国指定の角田市鳩原毘沙門堂長床(コモン堂)に奉納された2万3千余の絵馬調査に直接関わった氏による報告である(『福應寺毘沙門堂絵馬』1995)。この絵馬は、最古のものは明和5年(1768)で明治期のものが多数を占め、その図柄の99%にはムカデが描かれ、ムカデが蚕の大敵、鼠を追うと養蚕守護のために宮城県仙南地方の農家が奉納したものという。この通称「ムカデ絵馬」をめぐり、養蚕業、毘沙門堂の祭礼、奉納習俗、ムカデに対する信仰など多方面から解説が加えられた。
当日は、通常の研究会と違い絵馬に関心を持つ主婦の方の参加などもあり、絵馬の絵解きの意外性から、神仏祈願の中での絵馬信仰の占める位置づけまで、また、韓国研究者から日本のアニミズム、供養信仰など民俗信仰に対する幅広い質疑応答があり、その後の交流会まで話題が持ち越された。
(文責:佐野賢治)