神奈川大学日本常民文化研究所

学術交流 国際会議 International Conference on the Inclusive Museum Portugal

国際会議 Fourteenth International Conference on the Inclusive Museum 2021への参加報告

日程:2021年9月8日(水)~9月10日(金) 
主催:The Inclusive Museum Research Network
会場:オンライン(オンデマンド)配信(ポルトガル リスボン)
参加者:須崎文代、泉水英計

  • 図1 スライド1
  • 図2 スライド2
  • 図3 スライド3
  • 図4 重要文化財泉家住宅の高倉

 今回、学術交流のため標記の国際会議「第14回ミュージアム包括的国際会議Fourteenth International Conference on the Inclusive Museum」(2021年9月8-10日@リスボン、ポルトガルおよびオンラインにて開催)に参加した。この国際会議は、ユネスコ議長を代表とするThe International Institute for the Inclusive Museum (iiiM)を中心に、世界各国のミュージアムがパートナーとなって開催されているものである。第14回にあたる本年度の国際会議は、昨年度に開催延期となった第13回の内容をほぼそのまま引き継ぐものであった。実際の発表はオンライン(オンデマンド)配信によって実施された。
 発表は、日本常民文化研究所と所蔵資料の紹介を主な内容としつつ、さらに内容を農村住宅や生活風景に寄せたテーマとして以下を掲げた。

“A Study on the Situation of Farm Houses in Pre-war Japan Using the Photograph Archives of the Attic Museum(アチック・ミューゼアム所蔵写真にみる戦前期日本の農村住宅に関する一考察)”

 具体的には、アチック・ミューゼアム時代の昭和9(1934)年に実施された「薩南十島調査」時に撮影されたアチック写真を主史料とし、なかでも奄美大島の建築形態として特筆される高床建築(特に高倉)に注目した(図1~3)。
 奄美大島の高倉は江戸東京たてもの園にも移築保存され、その文化的価値について国内では周知されているものの、アチック写真において記録保存されているアーカイブの実態や、奄美大島における現存状況について世界的に知られているとは言い難い状況である。
 そこで今回の発表では、事前に奄美大島に現存する高倉について現地調査(2021年8月11~14日、国指定重要文化財泉家住宅の高倉他現存遺構の撮影(図4)、博物館における復元模型の撮影、図面等の資料調査)を実施し、アチック写真にみられる様相の裏付けとなる情報の収集・分析を行った。発表内容には中之島、硫黄島等で撮影された写真も含んでいたが、これらの島々の遺構に関する調査は、日程的な都合上実施することができなかった。
 発表においては、アチック写真の撮影内容のみならず、そこに付記されていたタイトル・場所・説明等のテキストについても説明を行い、当時記録のためにどのような手法が採られたのかが伝わるように心掛けた。
 発表の形式がオンデマンドであったため、質問は逐次発表者に伝えられることになっていたが、本発表に関する質問は特段寄せられなかった。今回の発表によって常民研およびアチック・ミューゼアムの存在を伝え広める機会にはなったと考えられるものの、積極的な交流を図るためには、インタラクティブなコミュニケーションが可能となる機会を今後も継続して模索する必要があると思われる。

(文責:須崎文代)

■2021年度の活動

  • 国際会議ICIM (International Conference on the Inclusive Museum) Portugal発表(アチック時代の薩南調査の事例と現況について)に関する現地調査 2021年8月11日~14日 奄美市歴史民俗資料館、奄美の郷、国指定重要文化財(建造物)泉家、伝統民家(旧安田家住宅) 須崎文代