ATTIC MUSIUM

神奈川大学
日本常民文化研究所
Institute for the Study of Japanese Folk Culture Kanagawa University

調査と研究

ブラジル日本人入植地の歴史民俗学的研究

科研費共同研究「ブラジル日本人入植地の歴史民俗学的研究」公開研究会 終了報告

公開研究会2018「ブラジル日本人入植地の歴史と民俗」

日程:2018年12月15日(土)10:30~17:00
会場:神奈川大学横浜キャンパス 3号館305教室


  • レジストロからのゲストスピーカー(福澤氏と清水氏)

  • ご寄贈いただいた屋根瓦

  • 米田氏製作の日系住宅建築模型

  • 田中氏提供の移民募集用幻灯ガラス乾板

 共同研究の成果発表の一つとして公開研究会を開催した。共同研究の主要な調査地であったレジストロ市の日伯文化協会から福澤一興氏、清水ルーベンス氏の2名をゲストスピーカーとして招聘し、一般参加者にも現地の声を直接聴く機会を提供した。まず、福澤氏が「ようこそレジストロ日伯文化協会へ—過去・現在・Futuro」と題し、日系人組織の歴史的変遷と諸活動について紹介した。つづいて、清水氏が「日本人植民地のレジストロへの影響」と題し、日本人の入植がレジストロの発展に寄与した諸相について紹介した。渡伯して清水家を大きく拡大した祖父の逸話や、現在取り組んでいるアグロフォレストリー事業およびエコツーリズムによる地域振興の紹介が印象的であった。午前の部には、2015年に入植地内の日系家屋を実地調査した米田誠士氏によるドローン撮影動画の上映もおこなわれた。日系家屋の外面と周囲の様子が手に取るようにわかる動画であった。なお、これら3氏は、最近成稿となった『ブラジルサンパウロ州レジストロ植民地アーカイブ—建物写真から見る村と町の風景』(レジストロ郷土史会)を編集している。


  • 発表に聴き入る会場の様子

  • 初来日の清水一家

  • 展示品を囲んでの議論

  • 発表者と来賓

 午後の部では共同研究メンバーによる6本の個別発表があった。まず、角南聡一郎(元興寺文化財研究所)が「墓からみた日系移民のエスニシティ—レジストロ市サウダーデ墓地の場合」と題し、墓碑の諸形態を通した日系移民の文化変容を論じるとともに、無縁墓廃棄の事例に触れて墓碑の記録化の必要性をうったえた。つづいて、泉水英計(神奈川大学)が「日系移民の出自としての日本語学校『同窓会』」と題し、入植地奥地に開設された初等教育機関の同窓会を通して入植地社会の変遷と入植者のアイデンティティを検討した。さらに、永井美穂(渋沢資料館)が「ブラジル日系社会の歴史を伝える手段—イグアッペとレジストロにおける博物館の可能性」と題し、リベイラ川沿岸に建てられた歴史的記念碑や郷土史関連書籍を紹介したうえで、新移民博物館建設への提言を述べた。4番目の発表は森武麿(神奈川大学名誉教授)が「ブラジル移民から満洲移民へ—信濃海外協会を対象として」と題し、長野県満州移民とブラジル移植民との歴史的関連を説明した。両地域を結ぶ力行会永田稠の活動と、レジストロ入植者により開拓されたアリアンサ植民地との関連が明らかにされ、聴衆の関心を集めた。残る二つの発表は建築班によるものであった。まず、須崎文代(神奈川大学)が「レジストロにおける戦前期竣工の日系移民住宅について」と題して、2016年度以来、同班で実施した現地実測調査5件(深澤邸、沖山スズ邸、沖山剛造邸、六川邸、天谷邸)についての調査報告と日系移民住宅の特徴について検討し、とくに窓周りの架構に特徴がみられることを指摘した。それに引き続き、田中和幸(近畿大学高専)が「現地調査にみる日系移民住宅の架構形状について」と題して、調査結果より得られた住宅遺構の架構形状の特徴と写真帳にみられる住宅の外観の分析に基づき、戦前期の移民住宅における窓周りの架構形状の傾向について報告した。口頭発表後には会場から質問とコメントが寄せられた。

 なお、この機会に福澤氏と清水氏から『レジストロ移民一〇〇周年記念誌』と、日系家屋に使用された屋根瓦の貴重なサンプルの寄贈があった。記して感謝申し上げる。
※本研究はJSPS科研費15H05172の助成を受けたものです。

(文責:泉水英計・須崎文代)