神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基盤共同研究 二神家・二神島の歴史・民俗研究

2019年度活動報告『島のスケッチ帖』の刊行  

  • 津和地島のほぼ中央にあった突堤。係船場として利用されていた。今は埋め立てられて無い(二神司朗氏画/1967(昭和42)年1月2日・スケッチブックより)
  • 津和地島西側の海岸。地引網をしているのか? 後方は怒和島(二神司朗氏画/1933(昭和8)年・スケッチブックより)
『島のスケッチ帖 二神司朗が
見た二神島 二神島絵画資料集』
(2020年3月)

 「共同研究 二神家・二神島の歴史・民俗研究」は、「共同研究 瀬戸内海の歴史民俗」の成果を継承して2016 年度から始まった。その後、「二神司朗家文書」の整理・保全作業に継続して取り組んできた。
 「二神司朗家文書」のほとんどは現在日本常民文化研究所に所蔵されているが、一部資料は傷みの激しくなった、故二神司朗氏(1908-1999)の旧宅に残されたままであった。そのため、前年度2018 年度には、残る資料群(古文書・日記・書簡・アルバム・スケッチ帳・襖など)を分類・整理した上で、ご遺族の了解を得て神奈川大学に移送することになった。2019 年度には、この資料群に含まれる故二神司朗氏のスケッチ帖をもとに『島のスケッチ帖』を新たに編集・刊行した。
 故二神司朗氏は画家として知られており、多くのスケッチ帖を残されていた。当初は、今回の資料群に含まれる写真をもとに、既刊の『島の写真帖』の続編として二神司朗家の写真帖を作成する予定であったが、二神島の風景や人びとの暮らしを描いたスケッチを眺めているうちに『島のスケッチ帖』という新しいアイデアが生まれてきた。
 司朗氏の画業は、1988 年、愛媛県中島町・愛媛新聞社主催により愛媛県美術館で開かれた「二神司朗展」の際に編まれた画集によってしのばれ、その作品110 余点は現在中島町に寄贈されている。一方、それとは別に多くのスケッチ帖が旧宅や、司朗氏のお弟子さんにあたる篆刻家中田和邦氏のもとに残されていた。編集作業を進めていくなか、2019 年6 月1 日~ 3 日に所員の関口博巨・前田禎彦が松山市の中田氏宅を訪れ、ご厚意により氏が所蔵する司朗氏のスケッチ帖を一時借用・利用することが許された。
 『島のスケッチ帖』は、これらも加えて編集し直されることになった。
 完成した『島のスケッチ帖』には、厳選されたスケッチの数々が、「二神島の風景」「二神先生と子どもたち」「船のある風景」「人々の暮らし」「近隣の島々と町」などの各項目に分類され掲載されている。また、調査でいつもお世話になっている豊田渉氏と中田和邦氏のご協力を仰ぎ、スケッチに描かれた場所や内容について詳細なコメントもいただくことができた。おかげで内容はより一層豊かになり資料価値も高まった。
 この『島のスケッチ帖』が、往事の二神島の景観と人びとの暮らしをしのぶよすがとなることを期待してやまない。

(文責:前田禎彦)

2019 年度の活動

○中田和邦氏宅訪問
日程:2019年6月1日(土)~3日(月)
調査先:愛媛県松山市
調査者:前田禎彦・関口博巨

○『島のスケッチ帖』に関する打ち合わせ 
日程:2019年9月10日(火)・11日(水) 
調査先:愛媛県松山市二神
調査者:前田禎彦・関口博巨

○『島のスケッチ帖 二神司朗が見た二神島 二神島絵画資料集』 2020年3月25日刊行