神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

共同研究 ブラジル日本人入植地の歴史民俗学的研究

ブラジル調査報告—レジストロ植民地第5部小学校同窓会

日程:2017年5月18日(木)~5月25日(木)
調査先:ブラジル国サンパウロ州レジストロ市
参加者:泉水英計、ブルーノ・ヒサツグ

  • 第5部同窓会は本年20回を数える
  • 同窓会会場の様子
  • 仁戸田庸吉郎氏肖像と同氏作詞校歌
  • 集会所内に飾られた皇室の肖像

 レジストロ入植地の最奥部にて隔年開催される「同窓会」の取材をおこなった。日本人教育のために領事館の援助を受けて第5部学校が開校したのは1925年であった。教鞭を執った仁戸田庸吉郎の指導は厳格であったが、それゆえに住民の尊敬を集めた。前回の現地調査時に、彼を敬愛する卒業生が中心となって恩師の遺徳を偲ぶ会が現在も定期的におこなわれていると聞いた。けれども当時の教え子はすでに他界している。この「同窓会」とは何か。本年の集会には60名の参加があり、その各々について年齢や出身地などの個人情報とともに第5部学校との関係を詳細に調査した。その結果、日本人学校がブラジル政府の小学校に再編成された後の卒業者とその家族が集う一種の同郷会であることがわかった。また、70年代に集団で離農移住したサンパウロ郊外で「同窓会」が始まったこともわかった。「同窓会」は、ブラジル社会への順応を次第に深める人々が、日本的教育実践を顕彰しながら、その機会を利用して自らの出自を確認する場であるようだ。
※本研究はJSPS科研費15H05172の助成を受けたものです。

(文責:泉水英計)