神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

共同研究 ブラジル日本人入植地の歴史民俗学的研究

研究会報告 明治村におけるブラジル移民住宅保存修理工事

日時:2017年6月28日(水)13:00~15:00
場所:日本常民文化研究所

博物館明治村石川氏の講義
研究会の様子

 去る2017年6月28日(水)、日本常民文化研究所において上記タイトルの研究会を開催した。講師に博物館明治村石川新太郎氏(以下、明治村と略称する)をお招きし、「ブラジル移民住宅保存修理工事」をテーマとして、本年3月に保存修理工事が竣工したブラジル移民住宅の修理工事内容についてご講演いただいた。この移民住宅は、建築班が調査対象としたレジストロにおける日系移民住宅と概ね同時期のものであり、参考情報として大いに有益なものとなると考えられる。
 以下は、ご講演内容の要旨である。
 明治村におけるブラジル移民住宅の保存修理工事は、2015年12月より2017年3月竣工までの1年4ヵ月の間、総事業費47,000,000円をかけて実施された。明治期日本の海外への集団移民は明治元年のハワイから始まるが、明治村にはブラジル移民住宅の他にハワイ移民集会所(1889年頃創建)、シアトル日系福音協会(旧シアトル住宅)(1907年頃創建)の2棟が既に移築保存されている。
 ブラジル移民住宅は、1919年サンパウロ州レジストロに建てられたもので、1975年に明治村に移築された。建築概要としては、木造2階建、切妻造スペイン瓦(丸瓦)葺で、梁間12.9m、桁7.1mの規模である。柱間基準寸法は、日本在来の尺貫法をもとにしている。工事着手前は、土台が腐っており(取り換えが必要な程度)10tジャッキを用いた揚屋の技術によって工事が行われた。その他、オリジナルの建築の基礎・土台、柱梁構造、間取り、使用材料の特徴や、修理工事における工夫についてご説明いただいた。
 その他、この住宅の使われ方や移築の際に持ってこられた二人挽き鋸、森林伐採用斧、墨壷などの道具類も参加者の関心の対象となり、活発な質疑応答がなされた。
※本研究はJSPS科研費15H05172の助成を受けたものです。

(文責:須崎文代)