共同研究 ブラジル日本人入植地の歴史民俗学的研究
科研費共同研究「ブラジル日本人入植地の歴史民俗学的研究」公開研究会 比較民俗研究会公開講演会 終了報告
「サンパウロ州イグアッペ植民地の成立—日本移民はどのようにブラジルでの暮らしを築いたのか—」福澤一興氏(レジストロ日伯文化協会会長)
日程:2017年10月20日(金)
会場:神奈川大学横浜キャンパス8号館41講堂
福澤氏は1940年埼玉生まれ、中学2年生のときに農業移民の両親に連れられて渡伯し、青年期には製茶用乾燥機の製造を手がけた。レジストロ日伯文化協会は、1994年に日本文化の継承と普及を目的に創設され、福澤氏は当初より文化部長として日本語学校の運営にあたった。日本常民文化研究所では2012年よりレジストロを基点に共同調査をおこなっており、2014年に協会長に選出された同氏からは、地誌について教示を受けるとともに、現地での調査活動に便宜を図っていただいている。講演内容は、リベイラ沿岸部の自然環境にはじまり、ブラジル人と日系人のパーソナリティ、レジストロを含むイグアッペ植民地(1914年入植開始)の歴史を概説した後、初期移民の入植1年目の作業(宅地造成、伐採開拓、耕作、現地人雇用、農具)が紹介された。また、開拓入植地の診療所診察記録からみる健康・衛生状態や、現地の篤志家が残した世帯記録から抽出した男女別新生児出生率の偏りなど、福澤氏が独自にすすめている分析についても論じられた。約20名の参加者のなかには移民研究機関からの聴講もあり、南米日系移民社会についてときに立ち入った質疑応答があった。
※本研究はJSPS科研費15H05172の助成を受けたものです。
(文責:泉水英計)