神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基盤共同研究 日本常民文化研究所所蔵資料からみるフィールド・サイエンスの史的展開

祭魚洞文庫の現状把握

日程:2019年2月6日(水)
調査先:流通経済大学
調査者:高城玲、泉水英計、全京秀、窪田涼子

『流通経済大学所蔵 祭魚洞文庫目録』
(1972 流通経済大学図書館)

 日本常民文化研究所の前身であるアチックミューゼアムは、渋沢敬三の私的な研究機関として設立され、研究活動には渋沢の個人蔵書および収集資料(祭魚洞文庫)が利用された。戦後、研究所は財団法人化され、祭魚洞文庫の一部は、文部省史料館(現、国文学研究資料館)、水産庁水産資料館(現、中央水産研究所)、渋沢史料館にそれぞれの機関の特色に応じて寄贈され分置された。祭魚洞文庫の残余は1966年に日本通運に寄付され、さらに流通経済大学に寄託(のち寄付に変更)された。『流通経済大学三十年史』によれば、その内容は、地方史、産業技術史、民俗学、文化人類学、考古学など多岐にわたり、和図書・和雑誌が1万8,785点、洋書・洋雑誌が2,659点であり、分置された祭魚洞文庫のなかでは最大のコレクションとなっている。
 出張の目的は、この流通経済大学祭魚洞文庫の現状を把握し、常民研が近年継続的に進めている「常民研運営資料」の活用促進事業との連携の可能性を探ることにあった。その結果、以下の点について連携の可能性が浮上した。
 流通経済祭魚洞文庫は日本十進法分類に準拠して閉架書庫に配架されていて、利用者は目録を使って図書や他の資料を検索し、出庫を依頼して閲覧するといった方法が採られている。1972年に出版された文庫目録(『流通経済大学所蔵祭魚洞文庫目録』流通経済大学図書館)の書誌情報は詳細にわたるが、合綴本については最初の冊子の主題によっておこなわれ、主題を異にする資料が2冊目以下に合綴されている可能性があることが判明した。このような合綴本には、調査活動に使われた手書きメモや、研究機関内で回覧された謄写版資料が含まれ、学史的関心からは極めて有用な情報であり、一般刊行物のように他所では入手できないので貴重な情報でもある。けれども、合綴本の2冊目以下の資料を検索するには、日本十進法分類から主題によって検索範囲を絞り込むことができず、資料の有無を確認するには目録全体を確認しなければならない。この隘路を避けるには目録の書誌情報の電子データ化が最適な方法であろう。このような方向で流通経済大学図書館に連携を提案し、具体的な手続きの検討をはじめることの了承を得た。
 当日は図書課長の岡田理加さまほか図書館スタッフから祭魚洞文庫について丁寧な説明を受け、キャンパス内の他の学術施設(「三宅雪嶺記念資料館」)へも特別に案内していただいた。記して感謝申し上げたい。

(文責:泉水英計)