神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基盤共同研究 日本常民文化研究所所蔵の川田順造文書を用いた 西アフリカ史・人類学史に関する基礎的研究

「第11回資料調査、第2回研究会」

日程:2025年12月13日(土)
調査先:27号館101室、201室(横浜キャンパス)
調査者:中尾世治、池邉智基、神代ちひろ、小綿哲、平山草太、三津島一樹
会場:9号館12室(日本常民文化研究所)
参加者:中尾世治、池邉智基、神代ちひろ、小綿哲、平山草太、三津島一樹

  • 研究会風景
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 2025年12月13日の9時から15時まで実施した第11回資料調査には、中尾世治、池邉智基、神代ちひろ、小綿哲、平山草太、三津島一樹が参加し、資料整理の現状を確認し、それぞれ今後の発表で必要とされる資料の写真撮影などの資料調査を実施した。
 同日の15時半からは、日本常民文化研究所に会場を移して、同じメンバーで第2回研究会を実施した。研究会では、まず中尾が「川田資料の全体像とこれからの方針」というタイトルで発表をおこない、川田資料の整理状況と、今後の研究方針をまとめた報告をおこなった。具体的には、川田資料は大まかには、川田自身が作成したもの(フィールドノート、口頭伝承の書き起こし、草稿、日記、読書ノート、写真、カセットテープの録音など)と、川田が学術活動のなかで取得したもの(調査地で収集した行政文書、新聞、地図、研究会で配布された資料、国内外の研究者から受け取った書簡など)に大別されることを述べ、それぞれが重要な学術的価値を有していることを述べた。報告では、年代別にフィールドノートを整理・比較する必要性などを指摘し、共同研究者と分担して解題や目録を作成する具体的な計画を提示した。
 つぎに、池邉が「川田順造における「地域」概念をめぐって」というタイトルで発表をおこない、川田の経歴の全体を「地域」概念から組み直して捉える内容の報告をおこなった。具体的には、特に、川田資料に含まれている、東京大学文化人類学研究室の院生時代の日本での農村調査実習と「日本文化の地域類型研究」プロジェクトについての資料を用いつつ、「地域」概念が院生時代からのひとつの主題であったことを指摘した。そのうえで、この「地域」をめぐる問いが、西アフリカでの広域の調査、『ヨーロッパの基層文化』、『母の声、川の匂い』などの深川の研究においても異なるかたちで反復していることを述べ、川田の膨大な著作と未公開資料を整理することで、新たな「地域」論として発展させる可能性があることを指摘した。
 質疑では、メンバーの分担や作業手順などについての今後の資料整理の方針が議論され、共有されたほか、川田の業績全体をみると、類似した主題を長期にわたって断続的に論じていく螺旋型の展開が読みとれることが指摘された。また、川田の著作は完成された体系ではなく、膨大なフィールドデータや構想を十分に展開しきれていない「未完」のものとして捉える必要があることも議論された。そのうえで、川田資料のフィールドノートを詳細に分析することで、彼の理論が形成される具体的なプロセスを再構築することが可能になるのではないかというひとつの結論にいたった。
 今後は、少人数での資料整理を断続的に進めつつ、年度内に、川田順造における深川に焦点をあてた第3回研究会を実施することを予定している。これらの研究会の成果をもとに、共同研究終了後に刊行予定の成果報告書を書き進めることとしている。

(文責:中尾世治)

※本研究はJSPS科研費課題番号23K12290の助成を受けたものです。