基盤共同研究 日本常民文化研究所所蔵の川田順造文書を用いた 西アフリカ史・人類学史に関する基礎的研究
「第17回資料調査」
日程:2026年7月28日(火)、7月29日(水)、30日(木)9:00~16:30
調査先:日本常民文化研究所
調査者:
(7月28日)中尾世治、廣田緑
(7月29日)中尾世治、廣田緑、三津島一樹
(7月30日)中尾世治、平山草太、三津島一樹
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図1 エッフェル塔を前にしたカフェでの川田順造(1960年代留学時代)
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図2 1969年アルジェリアのオアシス・ガルダイヤの風景
2026年7月28日、29日、30日に、中尾世治、廣田緑、平山草太、三津島一樹が第17回資料調査に参加した(廣田は28日・29日、三津島は29日・30日、平山は30日のみの参加)。今回の資料調査では、1970年代のフィールドワークなどに関連した文書の調査に加え、写真とカセットテープの目録作成を進めた。
カセットテープについては、現段階で125本の目録化を完了した。落語、ワールドミュージックなどの既製品も一定以上含まれているが、最も古いもので1968年に採録した口頭伝承と表題の書かれているカセットテープも存在することがわかった。いまだ多数のカセットテープが残されており、本年度中の目録化を目指している。
写真については、これまで扱ってこなかった、アルバム等に整理されていない現像写真やフィルムの目録化を重点的に進めた。残念ながら年代は不明であるが、パリ留学時代のフィルムが数点確認できた(図1)。また『マグレブ紀行』に結実した1969年の北アフリカの旅行時のフィルムも一括して残っていることがわかった(図2)。これらの写真資料は、日記やフィールドノートの記述と照らし合わせることで、これまで見えてこなかった同時代の状況を明らかにしうるものである。
文書については、目録作成のために、これまでの仮目録の整理・統合を進め、いまだ未登録であった資料の目録化をおこなった。そのなかで、新たに重要な文書が見つかっている。ひとつは、1977年度のトヨタ財団の助成金報告書である(図3)。川田順造は1976年に東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所に助教授として着任しているが、その翌年の1977年3月から1978年3月までの1年間、トヨタ財団の助成金でオート・ヴォルタでの調査をおこなっている。この間の調査の中心的な課題は、これまで明らかになっていなかったが、この助成金報告書からは、オート・ヴォルタの首都ワガドゥグと、川田の主たる調査対象であった南部モシのテンコドゴ王国の王都テンコドゴの都市形成であったことがわかる。またこの研究は、当時のオート・ヴォルタの国立研究所であるヴォルタ科学調査センターの所長で、オート・ヴォルタ出身者であるマルセル・プーシ(Marcel Poussi)との共同研究として実施され、この史料にはプーシによるフランス語の報告書も含まれている。のちのニジェール川大彎曲部や音文化についての国際共同研究では、アフリカの対象国の研究者を巻き込んだ共同研究が実施されているが、その原型は、この1977年度の共同研究にあったといえるだろう。
川田順造の文書群には、こうした成果報告書に加え、科研費の申請書なども多く含まれている。こうした文書、特に申請書はほとんどの場合、非公開となっているが、現在の研究者の学術的な営みを考えれば、助成機関に提出する文書もまた、その研究者の学問の展開を考えるうえでは重要な文書として位置付けることができる。さらに、申請書は多くの場合、申請者のそれまでの研究を、申請する研究の内容に紐づけ、統合することが求められており、個別の論文や書籍を超えた研究の統合と説明を促す装置となっている。川田順造の学問に関連する数多くの文書を有する本文書群は、学説史研究のなかでの新たな資料論的なアプローチを可能にするものとしても捉えることができる。
(文責:中尾世治)
※本研究はJSPS科研費課題番号24H02198の助成を受けたものです。



