神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」 " 日常茶飯 " —日本人は何を食べてきたか

共同研究「’’日常茶飯’’ —日本人は何を食べてきたか」 第1回公開研究会終了報告

「現代社会の中のモチ文化」
安室 知氏(神奈川大学日本常民文化研究所 所長 国際日本学部 教授)

日時:2021年7月28日(水)15:00~17:00
会場:Zoomミーティング

 日本常民文化研究所 基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」「" 日常茶飯"—日本人は何を食べてきたか」第1回研究会は、公開講演会(オンライン式)として開催された。「現代社会の中のモチ文化」をテーマとして、安室知氏の学術講演が行われた。
 安室知氏の講演では、「日本の民俗学におけるモチ」、「日本人の生活律:食のケ=雑穀・ウルチとハレ=コメ・モチ」、「柳田国男の餅論」、「稲作単一文化論、批判民俗学:坪井洋文」などが逐一展開され、「餅なし正月」の問題を克明に解説された。そのうえで、重点を「モチ文化の現在」に置き、東アジアの「モチ文化圏」、「モチの民俗分類」、「『餅』概念の拡大」を深く論述された。また、民俗世界におけるモチの概念は、農学で明らかにされたモチよりも明らかに広いことや日本の食文化における「餅」概念は一貫して拡大され、実際のモチ種の開発をはるかに凌駕するスピードと範囲で進んだことなどを指摘された。最後に、モチ文化に関する独自の民俗学の理論を纏められ、すなわち、「種としてのモチ」や「民俗としてのモチ」に加えて現代日本では、それまで備わっていなかった粘り気のある食感を付加したとき、新たな商品として「餅」が次々と生み出されて、「モチ」の文化資源化や「商品としてのモチ」は日本人の食生活と食文化を理解するための重要なポイントではないかと持論を展開された。

(文責:周星)