神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基盤共同研究 海域・海村の景観史に関する総合的研究

2016年度第1回研究会

日 時:2016年4月20日 17時30分から20時15分
場 所:日本常民文化研究所

  • 研究会風景

発 表
 1.「『吾郷櫻井之鯉魚養殖場之図』を読む-水田養鯉とは何か-」    発表者:安室 知
 桜井村(現長野県佐久市)に伝えられる「吾郷櫻井之鯉魚養殖場之図」(明治30年作)をもとに、画面の構成および養魚場図成立の社会的背景について検討した。
 本養魚場図には、コイの産卵・孵化からコイアゲ(収穫)までの水田養鯉作業が時系列的に描かれている。画面一番上には、噴煙を上げる浅間山が描かれ、また画面一番下には養鯉用具が置かれているが、それは遠景に自然の象徴として浅間山が、近景に人為の象徴として養鯉用具が置かれることで、自然と人為の狭間に成立する生業技術として水田養鯉が描かれていることを示す。
 また、明治30年に本養魚場図が描かれた背景には、養蚕に特化した農家経営を見直すべく、現金収入源の多角化のため水田養鯉が注目されたことがある。そのとき、本養魚場図は、図による養魚マニュアルとして機能し、長野県においては水田養魚技術の普及に寄与したものと推測された。

 2.「常民研所蔵『漁場図集成』の刊行に向けて」   発表者:越智信也・窪田涼子・安室 知
日本常民文化研究所が所蔵する2000点に及ぶ「漁場図」について、どのようにして研究資源化を図るべきか、その手法と方向性について、進捗状況を報告するとともに、参加者全員で議論した。具体的には、ホームページ上での発信の仕方、および「漁場図集成」を作成するためのインデックス作りについて検討した。

(文責:安室知)