基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」—便所の歴史・民俗に関する総合的研究—
沖縄の伝統的民家における生活文化および便所の遺構に関する視察調査
日程:2019年12月21日(土)~12月22日(日)
調査先:中村家住宅、旧玉那覇家住宅、旧平田家住宅フール
調査者:須崎文代
沖縄の伝統的民家では、人糞を豚の餌として利用するために豚の飼育場所と便所を合体させた「フール(豚便所)」が広く普及していた。現在では、フールを設ける慣習は無くなり水洗便所が普及しているものの、その遺構としては文化財指定民家などに残されており、当時の形態を実見することができる。
今回の調査では、重要文化財中村家住宅(中頭郡北中城村)と琉球村(国頭郡恩納村)内に保存されている国・登録有形文化財の旧玉那覇家および旧平田家フール等の視察を行った。
このような「豚便所」は東南アジアに分布するもので、沖縄のフールも中国南部や朝鮮半島から伝わったとされる。基本的に石積の1~3基の矩形区画に腰壁を設け、母屋側に排便場所と金隠しを設けた豚飼育小屋となっている。石造や茅葺の屋根が架けられることもある。平田家フールの解説によれば、トゥーシヌミーと称する排便場所は、近代になって都市衛生上の問題が指摘され、各家庭のトゥーシヌミーは区長立会のもとで潰され、新たなフールの建造は禁止されたという。今後はこうした近代衛生論との関係性も踏まえて調査研究を展開していく予定である。
(文責:須崎 文代)
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