神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」—便所の歴史・民俗に関する総合的研究—

第2回 共同研究「便所の歴史・民俗に関する総合的研究」公開研究会終了報告

便所の異文化間比較アフリカ・日本・フランス
川田順造氏(神奈川大学日本常民文化研究所 客員研究員)

日程:2019年12月20日(金)16:00~18:00
会場:横浜キャンパス9号館11室(日本常民文化研究所)
参加者:川田順造(発表者)、須崎文代、泉水英計、全京秀ほか

研究会の様子   

 第2回公開研究会は「便所の異文化間比較アフリカ・日本・フランス」と題し、川田順造氏(日本常民文化研究所客員研究員)の提唱する「文化の三角測量」にもとづいた、身体技法や糞便の扱いの異文化間比較によるトイレ(排泄)文化の紹介が行われた。特に前者の解説に重点がおかれ、アフリカとフランスの人々の身体的特性と生活行為の関係性について多彩な事例をもとにご解説いただいた。人糞利用の循環系についても言及され、フランスの田舎ではトイレの床下でブタを飼う、あるいは西アフリカのバウレ人の村では村はずれの森に入ってしゃがんで用を足すが、そこへ放し飼いのブタが現れて、とたんにキレイに食べてしまうといった具合に、家畜の餌として循環する営みの仕組みについてお話いただいた。また、あるアフリカの散村の集落では、住居外部の入り口付近の土地はその家の主婦に割り当てられ、そこで排便をし、またそこで野菜を育てもする。すなわち「菜園-トイレ」という利用の仕組みが構築されており、菜園の収穫の采配は主婦の手にゆだねられるのだという。参加者は興味深く聞き入り、発表後の質疑応答も活発に行われた。

[参考文献]
川田順造「エコ・トイレと高層(=高槽)トイレ—西アフリカでの体験から—」『月刊みんぱく』2007年10月号(第31巻第10号通巻第361号)

(文責:須崎文代)