神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」—布の製作と利用に関する総合的研究—

2019年度活動報告

「布の製作と利用に関する総合的研究」を進めるに当たって、横浜市歴史博物館との「布をテーマにした」共同企画展開催に必要な資料調査、収集および研究を実施

  • 出羽の織座米沢民藝館調査
  • 会津民俗館資料調査

 2019年度は計画の初年次に当たっており、基礎的調査を実施した上で今後の計画を作成するのが通常の流れであるが、当初は2020年夏のオリンピック開催に合わせた企画展開催の予定であったため、企画展の内容に合わせた調査を先行させた。しかし、オリンピックの1年延期に合わせ企画展の開催も1年順延されることになった。調査および資料の収集は、年度当初は順調に推移していた。
 調査は木綿以前の麻を中心とする自然布(出羽の織座米澤民藝館では原始布と称している)で製作使用された日常着、特に仕事着を中心に調査を進めた。企画展示では津軽のこぎん、南部の菱刺、庄内刺し子、会津刺し子など工芸的にも評価の高い資料も多く展示される予定であるが、さまざまな自然素材による布製品も多く見られ、文書記録では木綿の普及が当初考えていたよりも早い時期から広く使用されていたこと、一見ごわごわした素材と考えられていた麻が、使い込むほど木綿製品と判別困難になるほど柔らかな素材となることが分かってきた。また、漁師が出漁するときには木綿より麻が使用されるが、それは布の強さだけではなく、防水性や保温性に優れているなど、自然布に関し歴史、民俗さまざまな観点からの研究を進めていく価値をあらためて認識させられた。
 これに合わせて、研究テーマの共通理解を深めるため、3回の勉強会の開催を企画していたが、新型コロナの影響により開催を中止した。また、青森市、三沢市、会津若松市への追加調査も中止した。現在は新型コロナ問題の収束を願うものであるが、来年度開催予定の企画展に日程にも大きな影響が出るものと危惧している。
 いずれにしても、共同企画展の開催は「布の製作と利用に関する総合的研究」の最終目的ではなく、今後の方向性を見定めるために必要なもので、いわば出発点と考えている。研究所内および同テーマに関心を持つ研究者の参加を広く求め、活動を展開していきたい。また、収集資料の整理や展示を通して、学部、研究科の活動に寄与できるものと考えている。

(文責:昆政明)

2019年度の活動記録

日程:2019年9月16日(月)~9月17日(火)
調査先:出羽の織座米澤民藝館、会津民俗館、からむし工芸博物館
調査者:昆政明、刈田均、加藤友子

日程:2019年11月4日(金)
調査先:福島県立博物館
調査者:昆政明、刈田均、窪田涼子、加藤友子

日程:11月18日(月)~11月19日(火)
調査先:青森市中央市民センター戸門分館
調査者:刈田均、窪田涼子、加藤友子

日程:12月22日(日)~12月24日(火)
調査先:福島県立博物館、会津民俗館、出羽の織座米澤民藝館
調査者:佐野賢治、昆政明、刈田均、窪田涼子、加藤友子

日程:2020年1月31日(日)
調査先:良品計画、小川商店
調査者:昆政明、刈田均、窪田涼子、加藤友子