基盤共同研究 日本常民文化研究所所蔵資料からみるフィールド・サイエンスの史的展開
「史資料の保存についてかんがえる」
日程:2025年8月29日(金)
調査先:一般財団法人日本不動産研究所、東京大学経済学部資料室
調査者:関口博巨、泉水英計、高城玲、全京秀、窪田涼子、平田茉莉子
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不動産研究所での不動産鑑定記録の見学
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東京大学経済学図書館・経済学部資料館での
浅田家文書の見学
研究所で懸案となっていた二つの機関の見学を、都心に所在する利便から併せて訪問した。はからずも史資料の保存の問題を改めて考える機会となった。日本不動産研究所は、日本勧業銀行が担っていた不動産鑑定業務が、戦後の金融再編により銀行から切り離され、独立した機関となったものである。同研究所では戦前の鑑定手続に用いられた文書類が廃棄寸前にあったが、一所員の働きかけで約50箱が回収された。明治期から第二次大戦期にわたる都心部の住宅や公共施設の鑑定資料に加え、植民地下の台湾を対象とした資料も含まれており、学術アーカイブでの一括収蔵と広範な研究者層への周知が強く望まれる。他方、東京大学経済学図書館・経済学部資料室は燻蒸機器をも備えた本格的な史資料保存機関であり、同館所蔵の浅田家文書は現在の京都府にあった大庄屋伝来の史料群として農村経済史研究に寄与してきた。渋沢敬三の手を経て戦後に東京経済大学に寄贈されたと伝えられるが、移動時の錯誤による返却例もあり、今回の検証でも来歴の不明瞭なものが残った。史資料の由来を記録することの重要性を再認識させられた。
(文責:泉水英計)