基盤共同研究 日本常民文化研究所所蔵資料からみるフィールド・サイエンスの史的展開
ハワイ大学およびホノルル美術館
日程:2018年2月11日(日)〜2月23日(金)
調査地:ハワイ大学ハミルトン図書館、朝鮮研究所、ハワイ大学法学部図書館、
ホノルル芸術院資料室(ホノルル美術館)
調査者:泉水英計
ホノルルはアメリカ合衆国における東アジア地域研究拠点として知られる。戦前にハワイ大学マノア校に開講された東洋研究講座から冷戦期に設立された東西センターまで、いわゆる貫戦期の制度的・組織的発展を跡づける記録について、沖縄や朝鮮半島、旧南洋群島といった帝国日本の周辺部に関する記録に注意を向けつつ、太平洋コレクションおよび大学史アーカイブ(ハワイ大学ハミルトン図書館)、朝鮮研究所、ハワイ大学法学部図書館、ホノルル芸術院資料室(ホノルル美術館)にて資料調査をおこなった。おもな調査項目は以下のとおりである。
(1)ミクロネシア人類学共同調査(CIMA)
1947年から49年に文化人類学者および言語学者42人(21機関)が単独あるいは調査班を組んでミクロネシア各地で4箇月から6箇月の実地調査をおこなった。このプロジェクトは、旧南洋群島に関する知識の欠陥を埋めるという学術的な目的ともに、信託統治領での海軍軍政計画に基礎資料を提供するという実践的な目的をもっていた。
資料調査の結果、CIMAプロジェクト参加者の中間報告および最終報告書を入手できた。さらに、CIMAプロジェクトに先行する戦中および終戦直後の軍学連携プロジェクト(通文化サーベイおよび米国商事会社)に関する資料、また、CIMAプロジェクトの延長として信託統治領行政機関に雇用された人類学者に関する資料を入手した。
(2)琉球文化・考古学サーベイ
1960年から64年にホノルル芸術院は琉球列島の文化史に関する調査プロジェクトをおこなった。琉球大学と早稲田大学、琉球政府立博物館が連携し、ハワイ大学で学び晩年をホノルルで送ったジョージ・H・カーがプロジェクトの指揮を執った。このプロジェクトでは古文書のマイクロフィルム複写や方言の音声記録、文化財を撮影した写真が作成されて研究資料化されたが、適切に保存されなかった。
資料調査の結果、カーの在学記録、原稿、東洋学講座主任との通信、また、琉球文化・考古学サーベイの運営資料、このプロジェクトで撮影された写真プリント、ホノルル美術館での特別展に関する資料を入手できた。
(3)朝鮮研究所
1972年にハワイ大学に米国内初となる朝鮮研究所が設立され、77年から機関誌Korean Studiesを刊行している。設立計画および機関誌の創刊には、占領期日本(ミシガン大学日本研究所岡山分室)および米軍統治下沖縄(琉球列島学術調査)で実地調査をおこなったフォレスト・ピッツが関与したことが知られている。
資料調査の結果、朝鮮研究所が創立40周年時におこなった退職者インタビューの音声記録を入手できた。
以上の資料調査をおこなううえで、石田正人(沖縄研究センター)、岩渕祥子(ハミルトン図書館)、ダウン・スエオカ(ホノルル美術館)、マイケル・K・マクミラン(朝鮮研究所)の諸氏からは的確なアドバイスを受けた。
(文責:泉水英計)