研究拠点 気仙沼大島漁協文庫の管理と活用
気仙沼大島調査及び「第3回漁業史文庫を語る会」講演
日程:2017年9月29日(金)~10月2日(月)
調査先:宮城県気仙沼市大島
調査者:佐野賢治、小野寺佑紀、自主参加/佐野ゼミ院生有志
今回の目的は、「森は海の恋人」で知られる気仙沼湾へ注ぐ大川の水源、室根山も含め大島漁民の景観認識の背景を山と海の相関関係でとらえるための現地巡見と予備調査、および「第3回漁業史文庫を語る会」講演であった。
9月29日:唐桑半島巡見。御崎神社周辺は藪椿の群生。柳田国男も訪問しており、碑が建つ。漂着鯨を供養した鯨塚もある。
9月30日:午前中は、大島神社(江戸時代は修験宝性院が別当)、薬師堂(現・久須師神社、旧修験東光院)参観その後、外畑・小山家で千葉勝衛先生とともに小山家の来歴、本分家関係、百姓身分などの聞き書き。百姓が海産物・タバコなど海山の産品も商う企業家であることを確認。午後は、浅根コミュニティセンターで「もののけ姫から見た日本文化-草木国土悉皆成仏」のテーマで講演。45名の参加があり満席、質疑応答に加え、大橋開通後の島の将来について討論。
10月1日:午前中、2名の古老の方からカキ養殖の導入などについて聞き書き、午後は大島御崎、西光寺、長命寺などを訪問、墓調査。
10月2日:気仙沼早朝発。志津川、柳津、石巻経由で東日本大震災の復興を実見。横山不動尊、柳津虚空蔵尊でウンナン神について聞き書き。
室根山、早馬山(端山)、亀山が当地では信仰の中心であり、漁民の目印、山あての山にもなっている。また、寺社の別当の多くが江戸期には本山派修験であったことも興味を引いた。岬には御崎神社が祀られ、忠魂碑には徴用船乗組での戦死者の名が多いなど、このたびの震災も含め、海難死者供養と山、海への人々の心意をくみ取ることが最も大きな課題となると思えた。母国に海がないモンゴル族留学生にとっては今回、日本文化理解の大きな刺激になったようだ。
(文責:佐野賢治)