基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」 " 日常茶飯 " —日本人は何を食べてきたか
基幹共同研究「''日常茶飯''-日本人は何を食べてきたか-」第3回 公開研究会 第177回 比較民俗定例研究会 共催 公開講演会 終了報告
公開講演会:「日本人は何を食べてきたか—民俗考古学からのアプローチ」
発表者:名久井文明氏(物質文化研究所一芦舎 代表)
日時:2022年6月24日(金)10:50~12:20
会場:神奈川大学横浜キャンパス8号館8-34講堂
(対面の講演会であるが、オンライン参加も可能)
日本常民文化研究所共同研究「常民生活誌に関する総合的研究—"日常茶飯"—日本人は何を食べてきたか」第3回研究会(比較民俗研究会第177回研究会と共催)は、公開講演会(ハイフレックス式)として開催された。「日本人は何を食べてきたか—民俗考古学からのアプローチ」をテーマとして、名久井文明氏が学術講演をされた。
名久井文明氏の講演では、長年の調査研究で得られた豊かな考古学的資料、民俗事例資料や古代史の史料を駆使し、縄紋時代における食料の乾燥・保存・備蓄やその技術を克明に解説された。名久井文明氏の指摘によれば、縄紋時代草創期以降の遺跡から発掘された剥き身の「どんぐり」やその「へそ」、小さな孔が貫通した剥き身のクリなどは、当時の人々が食料を乾燥させてから備蓄していたことを物語る。それらの皮を除いた道具は臼・杵だが、その起源を遡ると旧石器時代の石器に行き着く。移動生活をしていた旧石器時代の人々が定住するようになった要因の一つは、食料の長期備蓄を可能にする乾燥技術を身に着けていたからであった可能性が高い。
名久井文明氏の研究方法は民俗考古学であり、その視点の一つは未発見の遺物を民具から類推し、手掛かりを民俗事例に求めることにある。また、先史時代人の技術を現代の民俗事例(例えば、クリ、「どんぐり」、トチ、クルミなどの木の実を乾燥させて長期保存を可能にする民俗的技術)から類推し、民俗事例と同じ利用方法が認められる出土遺物を比較し、有意義な発見に至ることが可能である。
(文責:周星)