神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基盤共同研究 海域・海村の景観史に関する総合的研究

スダテ漁法の分布と漁場図に関する調査

日程:2019年3月26日(火)~3月29日(金)
調査先:新潟県立図書館、鳥屋野潟、福島潟
調査者:安室知

福島潟
鳥屋野潟

 日本常民文化研究所が所蔵する漁場図のひとつに魞図(琵琶湖)がある。2017年度には滋賀県庁において魞申請のための漁場図を調査した。2018年度は、それに関連して、同型漁法(スダテ漁法)の分布調査を企画した。とくに本年度は、同型漁法が濃密に分布すると予測される日本海岸の潟湖に注目し、まずは新潟県において調査をおこなった。
 新潟県立図書館において、おもに自治体史および民俗調査報告書を用いてスダテ漁法の分布を調査した。その結果、福島潟、鳥屋野潟、鎧潟、佐潟においてかつてスダテ漁がおこなわれていたことが確認された。また、福島潟と鳥屋野潟では、実際にスダテ漁がおこなわれた湖岸地域を巡検した。
 鎧潟では昭和37(1962)年の記録「簀建場所抽選控」が確認され、当時鎧潟の周囲が漁場として12分割されていたこと、およびそれが抽選により漁業者が割り当てられていたことが分かった。さらに、天保2(1831)年の記録「永用留書」では江州滋賀郡大津堅田町(現大津市堅田)の住人が鎧潟においてスダテによる漁業を願い出て許可されていることも分かった(『鎧潟-鎧潟干拓地域民俗資料緊急調査報告書-』1966年、新潟県教育委員会)。近世期において琵琶湖のエリとの関係が確認され興味深い。

(文責:安室知)