基盤共同研究 渋沢敬三に関する総合的研究
流通経済大学図書館祭魚洞文庫の調査
日程:2022年8月4日(木)~8月5日(金)
調査先:流通経済大学図書館
調査者:丸山泰明、関口博巨、泉水英計、高城玲、山本志乃、川島秀一、太田原潤
渋沢敬三の蔵書の一部を所蔵する流通経済大学図書館(茨城県龍ケ崎市)の祭魚洞文庫にて調査を行った。祭魚洞文庫では、和図書・和雑誌を18,785点、洋書・洋雑誌を2,659点の合計21,444点を所蔵している。
祭魚洞文庫については、2019年に本研究所の基盤共同研究「日本常民文化研究所所蔵資料からみるフィールド・サイエンスの史的展開」においてもすでに調査を行なっている。前回の調査が、「常民研運営資料」との連携を目的としていたのに対し、今回は、渋沢敬三にとっての書物/書物から見た渋沢敬三を明らかにする観点から調査を実施した。また、モノとしての書物の保管のあり方を探るために、蔵書印や蔵書ラベル、古文書や和装本の整理のあり方にも着目した。調査により祭魚洞文庫は、社会経済史や民俗学の調査・研究のために収集した古文書や書籍、漁業に関する新聞記事のスクラップブック、少年時代からの渋沢個人が集めた蔵書、宮本常一のサイン入りの『忘れられた日本人』のような進呈を受けた書籍、大蔵大臣時代の公文書などの多様なジャンルの書物で構成されていることがわかった。すでに存在が知られていた、渋沢の自筆による魚名の調査・整理のノートもあらためて確認することができた。
今回調査を行ったことにより、「そもそも祭魚洞文庫とは、どの範囲までの書物を包摂する概念なのか」という根本的な問いも浮かび上がってきた。今後、他の研究機関に所蔵されている祭魚洞文庫も調査することを通じて、渋沢敬三による書物の収集・所蔵・出版の実態を解明することを目指していきたい。
(文責:丸山泰明)