基盤共同研究 渋沢敬三に関する総合的研究
第3回研究会開催の報告
日程:2023年7月29日(土)
会場:みなとみらいキャンパス15階15032講堂、Zoom併用
参加者:丸山泰明、関口博巨、泉水英計、高城玲、山本志乃、越智信也、窪田涼子
今回の研究会では、地方文書と書物の関係についての研究発表と議論を行なった。関口博巨「アチック・ミューゼアムの古文書整理と出版」では、戦前の1930年代という、庶民の歴史の研究に学問的価値が認められていなかった時代において、渋沢敬三がどのように古文書を発見し整理して、書物という形にして出版したのか、その試みは戦後にどのように引き継がれていったのかについて発表し議論を行なった。次の窪田涼子「アチック・ミューゼアムの出版活動について—序文・結語の検討から」では、「アチック・ミューゼアム彙報」や「アチック・ミューゼアムノート」などの序文と結語を検討することを通じて、古文書が活字化され書物の形態になっていくプロセスと、編集の作業に関わった人物たちの実像について発表がなされ、議論を交わした。なお、二つの発表を踏まえながら、日本常民文化研究所に所蔵されている古文書を整理・保管する封筒にも記載されている「祭魚洞書屋」と、1933年から水産史を本格的に研究するようにより1936年に建物を建てて研究拠点とした「祭魚洞文庫」の関係についても若干の議論を行なった。
研究発表と議論の内容は、単に渋沢敬三およびアチック・ミューゼアム、祭魚洞文庫の歴史的実態の解明にとどまるものではなく、近代日本における史学史や出版史にまで広がっていった。戦前において大学アカデミズムで展開した歴史学とは異なる、在野の空間で展開したもう一つの歴史学に光を当てる研究会となった。
(文責:丸山泰明)