神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基盤共同研究 日本常民文化研究所所蔵資料からみるフィールド・サイエンスの史的展開

国立民族学博物館での写真関連資料調査

日程:2022年3月16日(水)~3月18日(金)
調査先:国立民族学博物館
調査者:高城 玲(所員)

  • 民博 特別展「邂逅する写真たち─モンゴルの100年前と今」(2022年3月)
  • 民博 企画展「焼畑─佐々木高明の見た五木村、そして世界へ」(2022年3月)
第一次東南アジア稲作民族文化綜合調査の追跡調査。
チェンマイ県サンパートゥング村で当時の写真に
見入る住民(2017年3月)

 神奈川大学日本常民文化研究所(常民研)と人間文化研究機構国立民族学博物館(民博)は2020年3月に学術交流に関する協定書を新たに締結した。常民研と民博は、その設立の経緯から歴史的に深い関係にあるが、常民研創立100周年をひとつの節目としてその関係を一層深め、更なる学術交流を促進することが協定の目的である。
 今回の民博での資料調査は、具体的な交流の推進に向けた予備的調査の一環である。主に以下2項目の調査・観覧を行った。
 第1は、第一次東南アジア稲作民族文化綜合調査(1957−58年)関連写真資料等の閲覧である。民博には、当時の調査で撮影された写真資料が数千点所蔵されている。関連して、常民研には、調査団を組織・派遣した日本民族学協会の事務的文書資料が民族学振興会資料として所蔵されている。常民研の本共同研究でも、2017年3月には写真が撮影されたタイのチェンマイ県で追跡調査を行った
 近年、民博において所蔵資料を活かした「フォーラム型情報ミュージアムプロジェクト」が推進されてきたが、2022年度より新たに「人類文化アーカイブスプロジェクト」が計画され、その中のひとつとして「第一次東南アジア稲作民族文化綜合調査のアーカイブス構築」が構想されている。特にタイの写真資料を中心に多様な媒体の情報を総合したアーカイブスの構築をはかるべく、今回は、常民研所蔵の民族学振興会資料も上記アーカイブスプロジェクトと関連づける可能性を探る予備調査とした。今後は、民博のプロジェクトとの協力関係をさらに発展させるための資料整理や調査が求められるだろう。
 第2は、特別展「邂逅する写真たち─モンゴルの100年前と今」及び企画展「焼畑─佐々木高明の見た五木村、そして世界へ」の調査観覧である。特別展の写真は、100年前と今のモンゴルの写真を対比的に展示しており、60年以上前の東南アジア稲作調査団の写真と現在を考える上でも示唆的であった。企画展は、民博 佐々木高明元館長の焼畑を巡る研究を、写真やフィールドノートなどを介して展示しており、一人の研究者の足跡を残された調査資料をもとに如何に整理し紹介するかという問題を考える題材となった。

(文責:高城 玲)