神奈川大学日本常民文化研究所

調査と研究

基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究」 " 日常茶飯 " —日本人は何を食べてきたか

第4回研究会 公開講演会 終了報告

「日本酒」とは何か

報告Ⅰ:「日本酒」を「味」わう
発表者:姜娜氏(魯東大学文学院講師、神奈川大学日本常民文化研究所客員研究員)
報告Ⅱ:祭祀・儀礼と経済的合理性—酒藏でのフィールドワークから—
発表者:丹羽英二(神奈川大学歴史民俗資料学研究科博士後期課程)

日時:2022年10月28日(金)17:10~19:00
会場:神奈川大学横浜キャンパス3号館201教室
(対面の講演会であるが、オンライン参加も可能)

  • 松尾大社的酒樽(2010年7月13日/摄于松尾大社)
  • 井上酒造 蒸米(2019年12月14日)
  • 姜娜氏の発表
  • 丹羽英二氏の発表

 日本常民文化研究所基幹共同研究「常民生活誌に関する総合的研究—"日常茶飯"—日本人は何を食べてきたか」第4回研究会は、公開講演会(ハイフレックス式)として開催された。「『日本酒』とは何か?」をテーマとして、姜娜氏と丹羽英二氏がそれぞれの研究成果を学術講演で発表された。
 姜娜氏の講演では、長年京都の伏見で調査研究を行い、フィールドから得られた豊かな資料を駆使し、伏見酒を主な例にして、日本酒の生産プロセスを克明に解説されたうえで、物理的、人間的、歴史的、制度的、信仰的、日常的という六つの面から「日本酒」の「味」作りを論じた。また、日本酒の「味」と「和食」とのミックス関係や日本人が日本酒に何を求めているのかなどの視点からも吟味し、日本酒の「味」は日本人の飲食文化の中で一番鮮やかで生き生きとしている構成要素と見なし、人々は物理的な味だけではなく、そのものにある文化的な味や歴史的な味をも味わいたいと独特な持論を展開された。
 丹羽英二氏の講演では、日本酒の醸造企業でのフィールドワークに基づいて、酒藏が行われている祭祀・儀礼と経済的合理性との関係性を明らかにした。丹羽英二氏は純米吟醸酒「立春朝搾り」の拡販イベントに参与観察し、そこでは、製品のブランド化、戦略的な価格設定、当日配送可能なチャネル確保等の実践に加え、有難みや話題性を訴求するプロモーションの一環として、神職を伴う祭祀が組み込まれていたことなどを分析し、これらの実相を踏まえながら、醸造企業で祭祀・儀礼が行われる一因としての経済的合理性に関する考察を試み、有意義な結論を導いたと言える。      

(文責:周星)